ユニットケアで職員が固定配置されることの弊害

ユニット型施設の職員固定配置は弊害だらけ

ユニットケアは職員が固定配置されている施設が多いです。
今回は固定配置の弊害を取り上げます。
なぜ、ユニットケアは職員を固定配置しなければいけないのか?
固定配置にした事で、どのようなメリットやデメリットがあったのか?
そこまで職員の固定配置にこだわる必要があるのか考えてみたいと思います。

ユニット型施設の職員固定配置は弊害だらけ

ユニットケアで職員を固定配置にするメリット

 

  • 入居者と馴染みの関係を作りやすい

国は老人福祉法で、「入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したものとなるよう・・・」と記載しています。

[省令] 33条 (基本方針)

連続した生活を維持するために職員を固定配置にして馴染みの関係を作り、変化が少ない環境にすることが求められます。

毎日顔を合わせる職員が同じなら、環境の変化が少ないので、家族の様な関係を作れます。

特に認知症の入居者様にとって、「環境の変化」とは恐怖や不安を与えるものです。記憶の定着が難しくなっている状態で環境が変わると、前に定着していた記憶を書き換えなければいけません。それは認知症の入居者にとって大きな苦痛となります。

記憶の書き換えが難しいので、時にはもう居なくなった職員をずっと覚えていて、他の職員を居なくなった職員の名前で何年も呼び続けるほど。

  • 入居者の情報を覚えるのに10人が限界説

「職員1人が入居者の情報を把握するのには10人程度が限界である」とした考え方です。
職員は入居者様の1日の情報をなるべく詳細に把握する必要があります。
同じ空間にいると様々な事柄に遭遇します。その中で、その利用様に合った生活スタイルを確立し、色々な問題を克服していきます。
例えば、「この利用者様は椅子に座る時は、椅子の位置がこのような角度で配置していないと難しい」といった細かい情報や、「この入居者様はこの24時間で何時に何をしているのか?」といった生活スタイルについての情報を把握していないといけません。
そのような情報を細かく把握することで、より一層入居者様の生活スタイルに合ったケアを提供することが出来ます。

  • 職員は10人の入居者様を覚えれば良いだけ

職員目線で考えると、10人の入居者様の詳細を覚えれば良いだけなので、非常に仕事がし易いです。
これが、30名、40名、時には100名を詳細に覚える事になれば時間も掛かるし、移動の度に新しい情報も覚えないといけません。
実際100名の情報を覚えるとなると、毎日仕事が終わってからも相当な予習復習を行い、現場で実際に接していないと覚えるのは難しいです。
10名なら勤務時間内で全てのことを把握することが出来ます。
10名の入居者様以外に覚える必要が無いから、関わらなくて良い、思えばずっと気が楽なのです。

では、そのようなユニットに職員を固定配置するメリットに対してデメリットは何でしょうか?

ユニットケアで職員を固定配置にするデメリット

ユニットケアで職員を固定配置にする理由は入居者様と馴染みの関係を作り、暮らしの継続を支えていく環境を作るためです。
が、職員の移動が無いことよって以下のような弊害が生まれます。

 

  • 風通しが悪いので人間関係でトラブルが生じ易い

移動が無いので、いつも同じ職員が狭い世界で毎日顔を合わせます。
すると人間関係にトラブルが起こった場合、一度距離を置くことも出来ず、修復できなくなってしまいます。

  • パワハラ、モラハラが横行する

「狭い世界に人間が押し込められる」という状況は。本来であれば訓練を受けた人同士でないと成り立ちません。
これは、自分たちで何でも解決する必要があるからです。
問題が起これば、当人同士で話し合い、それでも難しい様なら第三者を間に入れて解決します。

一度離れて時間をかけて修復することは難しいです。なぜなら逃げ場が無いからです。嫌でもシフトが重なれば顔を合わせる必要があります。

訓練を受けていれば、狭い閉鎖空間で人間関係の大切さを理解することも出来ますが、実際は訓練を受けていない者同士が好き勝手にルールもなく争ってしまいます。

すると、4人対2人といったグループに別れてしまうことも。そのグループが敵対した結果、無視、暴言、陰口といったパワハラとモラハラが横行することになります。

ユニットの職員はチームとして訓練され完成されていなければいけませんが、訓練も受けていない素人の寄せ集めには無理な話です。

  • 組織はユニットに全て丸投げする

パワハラ、モラハラが横行しないように、組織はユニットを管理する義務があります。ですが、実際はそこまで余裕がない場合が多いのではないでしょうか。

私の知っている施設は、「ユニットのことはユニットで解決して」となり、全てをユニットに丸投げしていることがありました。

組織としてはユニットに介入しない

というスタンスで運営されているので、ユニットは更に狭い世界になってしまいます。

その狭い世界ではユニットリーダーの権限が特に強くなることもあり、リーダーが率先してイジメを主導することで、新人職員が退職する場合もあります。

訓練を受けていないチームなので、必ずスケープゴートを求めます。そうしないと結束出来ない弱点があるのです。

一番ターゲットになりやすいのは新人職員です。

最初の1ヶ月で品定めを行い、不合格となった場合、パワハラ、モラハラを徹底的に行い退職させます。それでも退職しない場合は施設長に新人職員は不合格であると伝え、組織として正式に退職させます。
私が働いていた施設の施設長はなぜ不合格のなのか?は確認も追求もしませんでした。言われたまま動くだけです。
この「退職させるか、続けて働いてもらうのか」のサジ加減をすべてユニットリーダーが決められます。

組織がユニットに依存しすぎた結果、この様になっている施設を幾つも知っています。
また、ユニット型で働いている職員の愚痴もこの内容に接触するものがほとんどです。

  • 「この施設で働きたい」という思いは叶えられない

施設のことを調べ、施設見学に行き、「私はこの施設で働きたいです」と思って就職したが、実際は配属されるユニットによって考えていた施設と全く違うことが多いです。
良い施設だと思っても、配属されるユニットが荒れていれば、詰んだと思って良いでしょう。

ユニット型の施設は、施設に就職するのではなく、ユニットに就職するのです。
ユニットの内情は分かりづらいです。
荒れているのかどうかなんて分かりません。
配属されたユニットがあまりにも酷くて退職してしまうのはもはや日常風景です。

  • 入居者目線ではなく、職員にとって都合の良いシステムに作り変えられてしまう

入居者様が暮らしやすいシステムを構築するため、ユニットに職員を固定配置にしていたはずが、いつの間にか職員にとって都合の良いシステムに置き換わっている事例。

就寝支援の更衣は夕食前に

就寝支援の更衣でパジャマに着替えるのは、就寝前であり、夕食前ではないです。しかし、職員が仕事を終えたいが為に、夕食前にパジャマに行為してそのまま食事をしている。
むしろ、パジャマに行為しないで、そのまま就寝する。

朝は2時起床

朝は2時から起床しています。朝の忙しい時間を少しでも分散させるため。

排泄パターンがわかっているからと、便漏れしていても時間通りにしか入らない排泄支援

どんなに便漏れしていようが、その入居者様にとってこの排泄パターンが良いからと、決められた時間にしか排泄支援を行わない。

と、職員の都合により歪められたシステム。この様な問題も組織の管理が行き届かないのが原因です。

馴染みの関係はグダグダな人間関係を構築するのにも一役買っています。

  • 自分のユニットを10人覚えれば良いんだけど、夜勤は20人だよね?

職員を固定配置にしていて、自分のユニット以外に何で隣のユニットの10人も把握しないといけないんでしょうか?
なぜなら、夜勤帯は20人を1人で支援する必要があるからです。

 

しかし、心配ありません。
自分のユニットの10人以外は、夜の排泄のみ覚えれば良いんです。

これは、最小限度の情報のみで夜勤を乗り越えられる素晴らしいシステムです。
夕食、就寝、排泄、起床、朝食といったサイクルで、一番動きが少なくて、リスクが無い深夜の排泄のみ関われば良いんです。

そうか! それなら簡単に覚えられそうだ。と思いますが、

勤務はこうなります。

夜勤者の勤務
22時30分勤務開始。

07時30分勤務終了

翌日は早番勤務

・・・・・・・・・・・・・

と言うことは、休みは?

夜勤明けが休みです。
なので早く帰らないと、休みは潰れていきますよ。

と言うことになります。
しかも、現実は夜勤者に就寝も起床も朝食もやらせます。ひどい施設は夜勤者に薬の管理までやらせます。
都合の良い事を言っておいて、実際は何でもやらせるのが常套手段です。
20人分の情報を理解していない夜勤者は知らない利用者の支援に奔走することになります。

  • 一つ一つのユニットが違いすぎて、他のユニットを全くフォローできない

ユニット職員の固定配置は、「職員の欠員を全く配慮していない」疑いがあります。
欠員の場合、生活相談員、ケアマネージャー、主任が代わりにユニットに入ります。
しかし、
情報を理解していないヘルプはユニットの職員にとって邪魔な存在でしか無い。
となってしまいます。
なので、ユニット職員が残業したり、早出したりして凌ぎます。
最初から欠員を全く配慮していないのが露呈していると思います。

固定配置にこだわり過ぎて、他部署の職員は知らないユニットで仕事をすることが難しいのです。ただでさえ、独特な世界になってしまっているユニットです。
知らない人が突然入ってきて、何も出来ないのは当たり前です。

もし、ユニットに人事異動が定着していれば、他のユニットの職員も普通にヘルプに来ることが可能です。その様な職員を増やすことで組織としてユニットを管理しやすくなります。
「あのユニットのことはユニット職員以外には分からない」のでは、誰にも助けてもらえなくて当たり前なのでは?

  • ユニット内で、権力を持つ人が現れる

ユニットに固定配置にしていると数年後、そのユニットに続けて勤務している人が1人か、2人になる場合が殆ど。
たいていは、この少数の職員に権力が集中します。
後から入ってきた職員は全て後輩となってしまい、例えリーダーだったとしても気に入られない場合、追い出される事になります。
その様な事を繰り返しているうちに権力が集中して、人事権にまで口を挟める様になる。
「この新人職員はうちのユニットにほしい」でもこの職員は要らないから他のユニットにあげます。と決めてしまうのです。
施設は元々ユニットに何もかも丸投げしています。
だから貴重な意見として、古株のユニット職員に従います。
ユニットが暴走して施設を動かしている状態です。そこに法人としての存在はありません。

しかし、人事移動により適正な配置をしていれば、この様な自体になりようがありません。
権力が集中する前に移動させてしまうからです。

  • ユニットに慣れすぎた職員はユニットを出ようとしない

ユニットに慣れすぎた職員はユニットを出ようとしません。移動がある場合、「私は辞めます」と平気で言います。
心理的には理解できます。
「どうして私だけ移動するの?他の人は移動しないのに」
「また一から入居者様のことを覚えるのであれば、他の組織でやり直したい」と言った心理状態になることで、退職という選択をしてしまうんだと思います。
これもユニットに職員を固定配置にした弊害ではないでしょうか。

固定せず、移動させることで組織が管理したユニットを実現する

職員を固定配置にするデメリットはまだまだ上げればキリがありません。
職員を急激に移動させるのは弊害が大きく、ユニットの良い面を壊ことになるので難しいですが、少しづつ公平に移動させるのは様々なメリットがあります。

上記の固定配置のデメリットは全て「少しづつ配置転換する」ことで問題をクリアできます。
欠員が出たって、隣のユニット同士でフォローし合えるだけでも助かります。
権力も特定の個人に集中出来ないので、パワハラやモラハラも少なくなり、ユニットを組織として管理しやすくなります。

多くの入居者様の情報を覚えなくてはいけまが、数ヶ月で慣れてしまいます。そんなに大変な事では無いはずです。介護の仕事は覚えることが少なく、楽な部類だと思います。

形式だけの朝のミーティングも、移動して配置転換を経験した職員が沢山いれば、「どの入居者様がどの様な状態になっている」と頭に入りやすいと思います。

新人職員の定着率も上がっていくのではないでしょうか。

また、入居者様との馴染みの関係も1年ほどで大きく入れ替わります。
入院や退所で入居者様が入れ替わるからです。
ユニットに固定配置されている職員も常に新しい入居者様の情報を集めないといけないのなら、移動もそんなに変わりないのではないでしょうか?
どっちにしても情報は収集していかないといけないのですから。

いい加減、現実を無視したユニット職員の固定は辞めるべきだと思いますがいかがですか?

 

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